佐川美術館新館―道を極める成長プロセスの秘訣―



佐川美術館概要

こんにちは。
本記事では佐川美術館新館についての紹介になります。

【佐川美術館】


佐川美術館とは滋賀県にある美術館です。最寄り駅からは離れているので、そこからバスやタクシーの利用をおすすめします。

この美術館は名前の通り、佐川急便によって設立されたもので、1998年に佐川急便創立40周年記念事業として開館されました。2007年には樂吉左衞門館が新館として増築されました。増築部には主に展示室と茶室があります。陶芸作品の展示だけでなく実際にお茶を愉しめるようにしたいという美術館側の提案と樂さんの思想が合致し、茶室も建てられることになったそうです。

新館の特徴

佐川美術館新館について乱暴にまとめると地下から入る部分は増築部分といえます。なぜ地下にあるかというと美術館と茶室とは非日常の演出を求められる空間だからです。

もうすでに本館があったこともあり、非日常感の演出は非常に頭を悩めたのではないかと推察されます。

そして何より、ただの地下ではなく、水面の下にあることは、建設する上でとても難易度が高いです。そこに関しては設計・施工業者の竹中工務店は流石といえます。

そうしてできた空間は地下ならではの暗闇の空間がひかります。ただ、照明を暗くしているだけでなく、素材も暗めのものをあえて選択しています。そして、必要なところに必要なだけ照明や天窓で照らしています。それが強調効果となって、作品をうまく演出しています。

展示室の「昼の航海」、「夜の航海」ではそんな光の加減をうまく扱っている展示空間といえます。同じ陶器でも昼と夜では違った表情を鑑賞できます。

その他の展示室には「破の守」や「破の破」など、一風変わった名前がつけられています。そのネーミングは茶室でもみられています。その話は後程触れようと思います。


この新館部の設計には樂さん自身が提案したということですが、その素材の選定と扱いは非常に巧みで、展示室の素晴らしさもさることながら、茶室はより細やかな技や演出がみられます。

茶室はアプローチである暗い露地と寄付で一旦心を落ち着かせ、その後の水露地で空つまり垂直性を感じ、階段を登っていきます。すると小間空間があり、地下と地上との境を意識します。そしてまた、階段を静かに登ると、地上にある広間にたどり着きます。そこでは今までの閉鎖感に対して水平の広がりを一気に感じられる建築の設えと素材の技巧が施されています。

実際には細かく多彩な仕掛けがありますが、百聞は一見にしかずということで、自分の身体で感じてみることをおすすめします。
茶室の見学もあるそうなので(投稿時現在)、一度立ち寄ってみてはどうでしょうか。

千利休の教え

この美術館の茶室は「守破離」という名がつけられています。名前の由来は千利休の教えにあります。

千利休の教えがまとめられた『利休道歌』に
「規矩作法 守り尽くして破るとも 離るるとても本を忘るな」
という歌があります。

現在では守破離とは芸道や武道、その他成長過程においての心得として用いられています。守破離の概念をまとめると以下のようになります。

「守/破/離」
  • 「守」とは師の教えや既存の型を忠実に守ること。
  • 「破」とは既存の型をベースに自分なりに工夫やアレンジを加えること。
  • 「離」とは新たな型を創造すること、開拓すること。

こうしてみると破と離、特に離は逸脱しており、憧れてすぐにでも試したくなりますが、ここで千利休の教えをあらためてみてみましょう。



そうです。破と離には守が必須なのです。

既存の型がないとただ奇抜なだけという可能性が高いです。異質なだけで作品のレベルが低いのはもちろん良くないですが、例えその作品のレベルが高くとも自分ではどこがいいかわからない場合、要所をおさえることができず、後発者に淘汰されそうなのは想像に容易いですよね。

「守・破・離」の概念は様々な分野に応用できるので、是非これからの自分のスキルアップにおいて意識してみましょう。




部屋の中が荒れているのは「離」の極地である。という方はこちら→ 次の記事


l参考:栗和田榮一(2007),樂吉左衞門作品集,財団法人佐川美術館      淡交社編集局(編)(2013),利休百首ハンドブック,淡交社

l更新:6/15/2019

lライター:TANI